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今ではそれどころか「あの家に帰れば安全なのだ」という安心感が、いつも心の中を満たしています。
かぜもめったにひかず入浴は、冬でもシャワーですますのが習慣のようになってしまい、浴槽に湯を張るのは月に一度もないほどです。
思えば、冬の朝起きてシャワーを浴びるなど、以前に住んでいた家では考えられないことです。
日本人は風呂好きといわれます。
たしかに、友人のドイツ人は、浴槽を使うのは週末にリラックスするときだけ、といっていましたし、ドイツのある主婦は新築して5年にもなるのに、浴槽をまだ一度も使っていないといっていたくらいです。
しかし、リラックスのための入浴という面だけならよいのですが、お風呂好きのかげに、「冷えた体をお風呂で温める」という、暖房の欠陥を入浴で穴埋めする習慣がかくれています。
断熱が悪く、窓が大きな日本の家では、部屋全体を本当には暖かくできないまま、ファンかなくなりました。
妻は繰り返し繰り返し、「家のつくりが違うと、こうも気持ちが変わるものかしらねー」などといい、3年以上たった今でもまだ、同じことをいい続けています。
終戦直後の貧しい時代を知る人間としては、こんないい思いをしていいのだろうかという不安におそわれるのですが、「どうせ太陽で暖まっているのだから」と、気がねなくぜいたくな暮らしを満喫しています。
ヒーターやこたつで暖をとったあと、冷たい床に入る前に体を温めたいとお風呂へ行きます。
ところが、欧米と違って暖房されていない日本の今までの浴室や脱衣室は、17℃を切るのも珍しくありません。
寒い部屋で裸になって、いきなり熱い湯に首までつかるのですから、危険なのは当然です。
東京ガス生活研究所の調査では、そのような状況下でお風呂で死にいたる高齢者は年間に約1万4000人と推定しています。
お風呂の死亡事故は、そのほとんどが冬に戸建住宅でおきます。
急死者のほぼ17%が80歳以上の高齢者で、心臓や脳の発作、あるいはそれに伴う溺死です。
世界の人口あたりの溺死者数とくらべると、日本の60歳以上、とくに70歳以上の高齢者の溺死数は欧米諸国の10倍、20倍と極端に多いことに驚かされます。
この年齢の人たちに水泳をする人が多い、とは考えられませんから、その大部分は浴室での死と思われます。
それにしても、欧米とのこの極端な相違は、単にお風呂が好きで、すまされるものではありません。
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